山田さん的非日常生活

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道行く先に、大きなツリーが見えた。


取り付けられた色とりどりの飾り、てっぺんに光る星。

駅前には毎年、クリスマスシーズンになるとメインの巨大ツリーが出現する。


「うわ、すっごい人…」


駅前はいつもの何倍も賑わっていて、そのうちのカップル率も抜群に高い。

クリスマスイブ、クリスマスの当日となれば、ツリーも仕事の納めどころだ。


待ち合わせは、午後3時に駅前。

カボが夕飯にレストランを予約してくれたらしいから、それまでの時間は映画でも観ようということになっていた。


…最近、ちゃんと待ち合わせっていう過程を挟んでのデートってしてなかったから、なんだか緊張する。

相手を待つ時間も楽しい、とかいう友達もいるけど、あたしは苦手だ。ソワソワして挙動不審になってしまいそう。

ちゃんと用意して五分前には着いたのに、待ち合わせ場所にはすでにカボの姿があった。

こうして遠目から見ても、目立つからすぐにわかってしまう。

慌てて駆け寄る。めったにはかないヒール付きのブーツだから、どこかにつっかかって転びそうだ。

ペタンコシューズをはいていこうとしたけど足立にダメ出しされて、仕方なくしまい込んでいた窮屈なブーツを棚から出してきたのだ。


「山田さん」


走ってくるあたしに気づいたカボは、男前な顔を崩して笑ってみせた。

スラッとした細身の黒いパンツにジャケット。パンツの生地が足りてないんじゃないかってくらい足が長い。

アクセサリーは身に付けないカボの首もとを、綺麗に整ったシャツの襟が飾っている。


「ごめん、ま…待った?」

「いえ、僕も今来たとこです」


そう言って微笑みながら、あたしの手を取るカボ。

…なんだこのやり取りは。「待った〜?」「ううん、今来たとこ〜!」なんてはたから見たらうっとおしいカップルの典型的会話…

…じゃなくて。


「えっちょっ、カボ!?」

「はい?」

「いやっ、はい?じゃなくて、…手……」


なんでちゃっかり手ぇ繋いじゃってんの。


あたしの手をまるっと包み込むカボの手と、カボの顔を交互に見比べる。

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