山田さん的非日常生活

すぐ隣にいるはずの足立の声が遠く聞こえる。

あたしの様子がおかしいと気づいた足立が、心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。


「山田…どしたの?」


…やばい、なんか泣きそうだ。

梢さんの言葉が頭の中をグルグル回って止まってくれない。

とにかく梢さんがすぐ近くにいるこの場を立ち去りたくて、コンビニに背を向けて足早に歩き出した。


「ちょ…山田っ!?待ってってば!!」


足立があたしに追いついて、あたしの腕をつかむ。その反動で、手に提げていた袋が大きく揺れた。


「どうしたのよ!?」

「梢さんが…」

「へ!?」

「梢さん、クリスマスカボと約束してるって…あたし、全然、知らなくて…」

「ちょっ、ちょっと待ってよ山田!!…それ、あの女が言ってたの?」


俯いたまま頭を上下に振る。

足立のスリッパのキティーちゃんがあたしを見上げる。いくら靴下をはいてるとはいえ、つま先が寒そうだ。


「…や、山田の彼氏もやるじゃーん!!山田と美女、フタマタかけるなんて!!」

「………ふた、また…」

「あ、いや!!じょ…冗談だってば山田!!」


慌ててあたしの肩をゆする足立。励ましてるつもりかもしんないけど、力が強すぎて脳みそまで揺すぶられる。


「そんなんあの女が見栄はってるだけでしょ〜?悔しかったんだって!!アンタの彼氏がそんなことするはずないよ」

「うん…」

「…そんなに心配ならさ、本人に聞いてみればいいじゃん。ね?大丈夫だよ」


帰ってケーキ作ろ、そう言って足立はあたしの手を引いた。ほんと、どこまでも男らしい。

足立は女でもそこそこうまくレンアイしてるけど、男だったら絶対モテると思う。

…足立の言うとおりだ。カボ本人から聞いたわけじゃないのに、カボの気持ちを疑うなんてどうかしてるよね。

明日はいつもより頑張るんだから。ケーキ渡して、おいしいって言わせてみせるんだから。


いつもより、ちょっと素直になってみせるんだから。


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