山田さん的非日常生活

最近の寒さに比べれば、今日はまだマシな方だ。

ホワイトクリスマスは無さそうだな、と済んだ夜空を見上げながらぼんやり歩く。

去年のクリスマスは雪が降ってたっけ。

そうしてふと思い出す。

バレンタインの次の日も、雪が降っていた。

失恋して、ヤケになって。そして。


…カボの存在が、あたしの中で大きくなった日。


「いらっしゃいませー!!……げ」

ぼんやり物思いにふけっていたせいか、何も考えずいつも行くバイト先のコンビニに来てしまっていた。

しかもどうやら今日のシフトは梢さんだったらしい。レジにいる梢さんは、あたしを見て露骨に顔を歪めた。

だから、げ、はこっちのセリフだっつーの。なんであたし、バイト先のニコニコマートに来ちゃったんだろ…。

考えなしの自分を恨みながら、さっさと冷蔵コーナーにある卵を取りに行く。

四個入りと六個入りがあるけど、一応六個入りを買うことにした。

べ、別に失敗するのが心配とかそういうわけじゃ…アレだアレ、日頃お世話になってるお母さんに余った卵を提供してあげようっていう心優しき家族愛だ。


「…何しに来たのよ」


あたしがレジに行くなり、梢さんがどす黒いオーラを放ってこっちを睨んできた。


「なんか焦げ臭いんですけど」

「ええっ!?嘘!?」


失敗ケーキの匂いが服にまで染み付いていたのだろうか。

アワアワと服の匂いを嗅ぐあたしに、梢さんは零下40度くらいの眼差しを向けた。

相変わらず、今日も見目麗しい梢嬢。ニコニコマートのダッサイ制服ですら高級なものに見えるから不思議だ。


「…今日は、カボ来たの?」


恐る恐る尋ねると、梢さんの眉がピクッと動いた。


「…ええ、来てくれたわよ」

「……そ…、か」

「明日、会うんでしょ?」


至近距離で、梢さんの大きな瞳に捕らえられてドキリとする。

楽しみにしていた気持ちが絞られた雑巾みたいに、ギュッと縮んでうねった。


梢さんは、カボが好きだ。


その彼女があたしだってことは置いといて。好きな人が、クリスマスイブに別の子と過ごすのは、きっと辛い。

あたしだったら、すごく悲しい。


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