山田さん的非日常生活

昔っから、世の中をうまく渡ってこれた方じゃない。コンプレックスの塊は、そう簡単に拭えるものじゃなかった。

梢さんのセリフが頭をよぎる。



"クリスマスに告白しようと思ってるんです"



「あのさ…っ、カボ!!」


振り返って思わずカボの腕をつかむ。

勢いよく振り向いたもんだから首がゴキッて鳴った。地味に痛い。

カボは驚いた顔をして、まん丸い瞳であたしを見つめた。


「あの…、あの、くり…」

「栗?」

「〜クリスマス!!どっか行ったりしない!?せっかくなんだしさ、ほら!クリスマスケーキならあたし作るし!!」


自分でもわかるくらい早口になる。なに必死になってんだ、あたし。

カボはキョトンとした驚いた顔のまま軽く首を傾けた。


「山田さんの手作り…ですか?」

「な…何!?嫌なら店で買ってくるわよ!!」

「嫌なわけないじゃないですか!ただ、山田さんの手作りケーキが食べれるの、久しぶりだなぁって思って」


嬉しそうに笑うカボ。

カボにケーキなんか作ったことあったっけ?…そう考えてふと、思い出した。

バレンタインの、ガトーショコラだ。

あのガトーショコラは別の人に作ったもので、決してカボに渡そうと作ったわけじゃないけど。


でも、今回は。


「楽しみにしてます」


そう言って、カボは車のエンジンを入れる。ゆっくり走り出した車は、道行く車の列の一部になった。


「少しだけドライブしたらお家まで送ります。山田さんの親御さんが心配するといけないので」

「あ…うん、…ありがと」


カボの穏やかな横顔を盗み見して、ホッと息をつく。

良かった。クリスマス、一緒に過ごせるんだ。

…てか、必死すぎてケーキ作るとか口走っちゃったけど大丈夫なのか、あたし。言っておくが、あたしは世紀の料理オンチである。


「24日ですか?25日?」

「え?」


過去の料理の失敗作を頭に浮かべるあたし。その黒歴史にそぐわない弾んだ声が、隣から聞こえた。


「クリスマスイヴとクリスマス。どっちの日にお祝いしましょうか」

「え…えっと」


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