山田さん的非日常生活

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バイト終了時刻。うまく梢さんを撒いて、早々とバイト先を出る。

梢さんが店長に捕まっていてちょうどよかった。もし今からあたしがカボに会うなんて知られたら、梢さんが黙って見ている訳がない。

コンビニから一本道路を隔てた向こう。

見慣れたカボの車が、あたしを待っていた。


「山田さん」


素早く助手席に乗り込むと、カボが満面の笑みで迎えてくれる。

まるでスパイの気分だ。なんで彼女のあたしが、梢さんのせいでこんなにコソコソしなきゃいけないんだろう。


「…いきなりどしたの?」

「久しぶりに、ちょっとドライブしたいなぁと思いまして」


山田さんと、と微笑まれて、思いっきり首を180度そらす。

…不自然すぎる。せめて90度にすればよかった。

だってカボの車の助手席に乗るのは結構久しぶりで、なんだか照れてしまう。

しん、と静かな車内。何か曲でもかけてくれないかな。…あたしって、いつになったら男女のお付き合いってモンに慣れるんだろう。


「…お店、寄ってけばよかったのに。今日もちゃんとかぼちゃプリンあったよ」

「いえ…あまりに頻繁に買いに行ってしまうと悪いかなと思いまして」

「悪いって何が?」

「だって僕の他に前世がかぼちゃだった人たちにも残しとかないと!独り占めするわけにはいきません」


…そんな人いねぇよ。前世がかぼちゃだとか言い出す人間がゴロゴロいるようになったら日本の未来が危険だよ。思いっきり独り占めしてくださって結構ですよ。

相変わらずのボケっぷりに、はりつめていた力が抜ける。


「それに、梢さんがお取り置きしていてくれた分があと一個残ってますから」


それなのにふとカボの口から出た梢さんの名前に、再びあたしの体はこわばった。

…昨日。街を歩いてたのは、確かにカボと梢さんだった。

確かめたい。なんで?って聞きたい。でも。


怖くて聞けない。うっとおしい女だって思われるかも。

それに、「なんで?」の答えが、もし。もしあたしにとって悪いものだったら?そうやってマイナスな方にばっかり考えてしまう。


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