山田さん的非日常生活

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「…げ」


バイト開始10分前。コンビニに入ると、レジにはもう梢さんの姿があった。

あたしを見て露骨に顔を歪める梢さん。どうやら、この前に引き続いて今回も梢さんと同じシフトらしい。

一言も発さないまま梢さんに背を向けると、着替えるべくバックに入る。


げ、はあたしのセリフだっつーの。

ただでさえあたしのことを嫌ってる梢さんと同じシフトで、その上梢さんとカボが二人で歩いているのを昨日目撃してしまったんだから。

足立は「偶然会ったとかそんなんだって!」って励ましてくれたけど、モヤモヤは晴れない。

昨日、カボはメールをくれなかった。こっちから送るのはなんだかしゃくだから、あたしからも送らなかったし。っていうか、あたしから送ることなんかほとんどないし。

今までだって、そんな毎日毎日電話やメールしてたわけじゃないから、別にいいんだけどさ。


「…山田、何陰気なオーラ出してんのよ」

「………」


着替えて梢さんの隣のレジに入るなり、いきなりワントーン低めの声が飛んできた。

…てか、いつの間に呼び捨てなんですか。

梢さんは、今日は長い髪を後ろで結っておだんごにしていた。

それがまた似合う。似合いすぎていっそ嫌みである。


「ただでさえもともと日陰の植物みたいな顔してんのにさぁ」

「…あのねぇ、さっきから黙ってれば──」

「梢ちゃん!疲れてないかい?お腹空いてたら裏にクッキーが…っと山田、いたのか」

「………」


ピカリーン!とオデコを光らせて、バックから姿を表した店長。

…人を思いっきりオマケ扱いしやがって。オマケどころか背景?「山田、いたのか」じゃねぇよ。ていうか唇の端に何かついてるんですけど。はい?クッキーですか、そうですか。勤務中の店長の自覚とやらを早期に身につけていただきたい。

梢さんはさっきあたしに向けていた鬼のような形相を180度変えて、天使のような笑顔で微笑んだ。


「ありがとうございます店長〜!!けど梢、全然疲れてないですから!仲良しの山田さんがいっぱい教えてくれて、店長さんは優しくて、梢ほんと幸せです〜!!」

「〜っ、誰が仲良し──!!」
「ね?山田さんっ!!」


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