山田さん的非日常生活

す。


頭の中で、その一文字以降の考えが停止してしまった。

顔がバーッと熱くなる。足立はそんなあたしを見て、大げさなため息をついた。


「…あのねぇ。好き〜くらい言えなくてどーすんの?どうせ山田のことだから、彼氏にも全然自分の気持ち言わないんでしょ」

「…す……好き、とか、そういうのは!軽々しく口に出すものじゃないっていうか──」
「出た、昭和女子山田」


…出たって。名物みたいに言われましても。

だいたいあたしは簡単に好き〜とか愛してる〜とか、ましてや結婚しよ〜とか軽く言う輩はだいっきらいだ。そういう言葉は結婚を前提として、家庭を持てる経済力があってから初めて言っていいもんだと思うわけ。そう、いっそ子供を責任持って育てられる自信もついてから───


「平成に戻ってこい、山田」

「…すいません」


マックの端っこの席に詰め寄られた状態で座って、しかもおごらされた上になんで怒られてるかんじなんだ、あたし。

そうしてふと思う。

もしカボに、好きとか…好き、とか、以上のことを。もし、言われたら。

矛盾したことに、きっとあたしはびっくりするくらい嬉しいかもしんない。


「梢さん…だっけ?その美人ライバルがガンガン好き好き〜って攻めてみなさいよ?ただでさえド平凡の、しかも可愛い一言も言えない山田なんて速攻でドボンよ!?」

「………」

「しかもアンタの彼氏、すんごい優しいじゃん。絶対ライバル女のこと邪険に扱ったりできないだろうし」

「…え?なんでカボが優しいって…?」


あたしが首を傾げると、足立は飲み終わったストローを引っこ抜いてビシッとあたしに突きつけた。


「旅行のこととか。…あれは悪かったと思ってるわよ。あたしたちが面白がってけしかけちゃったから」


福引きで当たった初めての2人っきりでの旅行。

馬から落ちかけたりフェンシングで刺されかけたりで大忙しだった。あと…カボの前で、泣いちゃったり、とかしたっけ。

あとは……




『ギュッ!!』


「────!!」



思い出すと恥ずかしさのあまり体がかゆくなる。頭を思いっきり振って脳内に浮かんだ映像を取り消そうとした。


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