山田さん的非日常生活

決まり悪そうに梢さんがあたしから目をそらす。

机の上にはパソコンと、店長が食べたであろう廃棄の菓子パンの残骸と思われる袋が転がっていた。


「…梢さん。じゃあなんでわざわざあたしがいるコンビニにバイトしに来たの?顔見たくないんなら…」

「だって、」


梢さんは顔を俯けて、小さな声でそう呟いた。


「悔しいけど…アンタがいれば、浩一郎さんがよく来てくれるかなって。…平日も、浩一郎さんの顔が見れるかなって」


…思わず、息を呑んでしまった。

梢さんから、まさに恋する乙女のオーラがふんだんに出ていたから。

先ほどのヤンキー並みの威圧感はどこにいったのか、淡く頬を染める梢さんを前にあたしは固まるしかなかった。


…梢さんは、美人だ。

しかもこうしてみると、本当に可愛い。常に女の子度が低いあたしとは大違いだ。


梢さんは、カボのことが本当に好きなんだ。


こんな可愛い人にこんな好意を向けられたら、男の人は誰だって悪い気はしないだろう。それどころか…


ブー、ブー、と呼び出しのブザーが鳴り響いた。

店長のヘルプだ。夕飯時でお客さんが増えたのだろう、レジが回っていないに違いない。

あたしが店に出るより速く、颯爽と立ち上がってドアに手をかけた梢さん。

振り返って、強気な眼差しであたしに釘を刺した。


「とにかく!私、銀杏もどきが浩一郎さんの彼女だなんて、絶対に認めないからねっ!!」



一人残されたコンビニ裏。


表立ったライバル宣言。



「…いったい、どうしろと……?」



あたしの平凡極まりない人生で、こんな漫画みたいなお決まりのセリフを吐かれる時がくるなんて、思ってもみなかった。











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