山田さん的非日常生活

いつもとは違う白いミルクプリンの容器だ。


「棚に無かったんですよ。売り切れたんですかね?」


この時間に無くなるなんて珍しい。いつもならカボがやって来る10時まで余裕で残ってるのに。

そんなことを思っていたら、


「あります!!」

「へ?」


梢さんが素早くあたしの手からミルクプリンを奪うと、カボにキラキラ光線を向けた。


「浩一郎さんが買う前に売り切れちゃ困ると思って、梢がお取り置きしておきましたから!!」

「………」


…いつの間にそんなことしてたんですか。

呆れるあたしとは反対に、ほわんと嬉しそうな笑みを浮かべるカボ。


「あ、そうなんですか!ありがとうございます」

「裏の冷蔵庫にあるんで取ってきます!!…山田さんが!!」

「〜はぁ!?なんであたしが……」


取ってきてくれますよね?と言わんばかりの押しつけがましい黒い笑顔を向ける梢さん。

その威圧感にしぶしぶ頷くと、一人で梢さんが勝手にお取り置きしやがったプリンを取りにバックへ戻る。


「ったく何なのよ…」


今日ほぼ初対面で、なんであたしがこんな仕打ちを受けなきゃならないんだ。

っていうかそういえばカボって浩一郎っていう名前だったっけ。浩一郎さんって呼ばれるの、久しぶりに聞いた。あんまりにも"カボ"が定着しすぎて忘れてたよ。いっそ東山カボかと思ってたよ。


「………」


梢さんのカボへの崇拝の眼差しを思い出し、冷蔵庫の中で押し黙る。


…もしかしてもしかしなくても、


梢さんは、カボ…いやいや、浩一郎さんが好きなんじゃないだろうか?


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