山田さん的非日常生活

さっき「ご指導のほどよろしくお願いいたします」とか言われたばっかな気がするんですけど。

…っていうかあたしの場合、バイトとして使えるレベルになるまで約1ヶ月かかったんですけど。全くもって立場がない。


梢さんがあんまりテキパキ動くもんだから、普段の仕事の半分もあたしに回ってこない。

コンビニのドアが何回か開いてお客さんがぼちぼち入り始める。

夕食用にか、お弁当コーナーで悩んでいる姿が見てとれた。


「あの…梢さん」

「はい?」

「お手伝いの仕事はどうしたんですか?」


隣のレジの割り箸を補充する手を止めて、梢さんがこちらを見た。


「もちろん続けてますよ?」

「じゃあなんでコンビニバイトなんて…」

「…東山家のお手伝いの担当は土日だけなので。平日は朝から学校がありますから」


抑揚の無い声で淡々と答える梢さん。

それだけでなく、あたしを見る目線が怖い。


…あたし、嫌われるようなことした覚えないんですけど。

そもそもまともに対面したのは今日が初めてなのに。


…もしかして、生理的に無理とか?いやいや、たしかにあたしは誰からも振り返られないド平凡な顔つきだけどいくらなんでもそこまでひどくはないはず───


「山田さん」


でももしかしたらこのぺちゃっとした低い鼻がいけないのか?確かに日本人の平均よりちょっと低いかもしれないけど、一応鼻であることはわかるくらいちゃんと盛り上がって───


「山田さん!!」

「は……へ!?」


驚いてバーコードリーダーを手から落としてしまった。

…レジの前に、ニッコリ笑ったカボが立っていたから。


.