山田さん的非日常生活

あたしがじいっと見つめすぎていたのか、視線に気づいた梢さんが不思議そうな顔で首を傾げた。


「あの…?」

「…はっ!!うん!レジ打ちですよね、レジ!!」


残念なことに、あたしは人にうまく何かを教えるっていうのが苦手だ。

取りあえずあたしが打つのを見て感じをつかんでもらって、梢さんには袋詰めをしてもらおう。


コンビニの袋は小さいのから大きいのまで六種類くらいあって、お客さんが買ったものに合うサイズを見当づけなきゃならない。

しかもアイスとかのデザート系を買うお客さんにあったかい肉まんを頼まれた時には、別々に袋詰めしなきゃならない。これがまた面倒で──


「肉まん」

「うへ!?」

「……」

「……」


…思わずとんでもない声を出してしまった。だってそんなタイムリーな時に肉まんとか言うから。


梢さんが驚いて目を丸くする。


「いや…あの、す…すみません…。何か?」

「肉まん、補充した方が良くないですか?」


梢さんが指さした保温器の中には、肉まんがもう一つしか残っていなかった。


「あ…ああ、そうですね!」

「バックの冷蔵庫に在庫あるんですよね?私、取ってきます」


そう言ったかと思うと、颯爽と踵を返してバックへと向かう梢さん。

あんぐり開いてしまった口が閉まらない間に、戻ってきた梢さんはテキパキと保温器の中に取ってきた肉まんを並べだした。


「こ…梢さん?」

「はい?」

「今日、バイト初日ですよね…?」


…なんでバイト約一年続けてるあたしより仕事できてるんですか。

梢さんは怪訝そうな顔で眉を寄せると、「そうですけど?」と当然のように吐き捨てた。


「いや…、なんか慣れてるなって思って…」

「コンビニエンスストアの仕事内容は大まかにチェックしてきましたから。大した仕事ないですし、わざわざ教えていただかなくても一読しただけで十分かと」


そう言って、綺麗な顔でニッコリと笑う。


「…一読、しただけで?」

「ええ、一読しただけで」

「………」


…あ、あれ?


なんか感じ悪くないですか?


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