「リョウ、もう二人とも行ったよ。…って泣いてるし」


「…泣いて…ない…」


「はいはい、で、どうした?」


「……嫌だ…」


「なにが嫌だって?」


「おれ、こんな性格が嫌だ」


カイトは何も言わずおれを見つめている

まるで話すことを促すように


「手が出る…思わず…。ダメだって、直そうって思ってるのに…できない自分が嫌だ」


そして誰かを傷付ける


「嫌い…。こんなおれ嫌い。いらない」


もっと…


「もっと優しくて可愛い性格が良かった?」


「……」


「なんで分かった?って顔してる」


「……そうだよ…。もっと優しくて可愛くて女の子らしい性格だったらよかった!!」


「そうかな?」


「……なんで?」


「だってそれは《リョウ》じゃないじゃん」


カイトの言っている意味がわからない


「つまり、リョウはその性格で《リョウ》なんだから気にしなくていい。暴力は控えたほうがいいけど、皆、今のリョウが好きだよ。だから無理に自分を変えようとしなくていい」


「やっぱり…暴力は控えたほうがいいんだ…」


「そりゃそうでしょ」


「あぅ…」


カイトは厳しい

だけど嘘はつかない


「自分を変えたいっていうなら別にいいけど、無理に優しく可愛く振る舞っても変だよ」


「はい…」


「それに、リョウはもう充分優しいし可愛いから大丈夫」


「…ありがとう…」


カイトはお世辞がうまいなぁ

ここぞという時に使ってくる

これ、女子だったら即恋に落ちちゃうよ

おれも女子だけど


「ははっ、レイには内緒にしとくから安心して。コウタは半分気付いちゃってると思うけど」


「うん、ありがとう」


「どういたしまして」


カイトはいつも助けてくれる

理解してくれる

いつか…カイトに好きな子が出来たら全力で応援しよう

好きな子とかじゃなくても

今までの恩を返したい

カイトの役に立ちたい

本当にありがとう

今までもこれからも傍で支えてほしい


「じゃ、生徒会室戻ろっか」


「うん、そうだね」


涙はもう止まって乾いていた