「美琴、どうだった?
見た目だけは良いでしょあの子」
私の着物の見立てもあるしね、と妖しく笑う麻理子さん。
…唯一まともだと思っていたのに。
「…見た目だけっていうか、性格とかも良かったですよ。
年上らしくリードしてもらって、楽しめましたから」
そういって少し微笑むと、麻理子さんは目を丸くした。
いつもクールなのに、珍しい。
「…総司郎君って、笑うのね」
「…笑いますけど」
「初めて見たわ。
高校生らしくて可愛いじゃない」
麻理子さんはいつも通りな余裕の笑みに戻り、楽しそうに俺を見る。
…なんだ?
「そお。
総司郎君がねぇ…
美琴もやるじゃない」
「麻理子ちゃーん?
そろそろ御開きにしましょう?」
「えぇ、そうね」
母と美琴さんも話し終えたのか近付いてきて、解散となった。
「総司郎君、今日は有難うございました。
楽しかったです。
菜々子お姉様も、またたくさん語りましょうね」
「えぇ、それじゃ二人とも、またねぇ」
目が合い、美琴さんが挨拶してくれた。
…これで会えなくなるのか、とか考えていたら言葉が出て来なくて、気付いたら二人はいなかった。
「さ、帰りましょっ。
今日は有難うね、良いネタになったわ!」
「…あぁ、良かった」
「…総ちゃん?」
携帯を扱えないのをこれ程悔やんだ事はない。
アドレス交換。
アレをすればいつでも連絡がとれたのに…