天狗岳に向かう冬矢。
一人だ。


門前払いを受けることなくすんなりと奥へと迎えた。


「警戒、されてんなぁ……」

威圧するような妖気が肌を刺す。
そのまま奥へと進んでいく。大天狗に直接会って話をする。


そのために今回は丸腰である。
妖刀も札も、仲間ですら連れていない。


そのまま招かれるように奥まで進む。




囲まれているのは分かっている。
もし今の状況で襲われたらどうしようか。少し考える。


「……」

考えても仕方がない。なんとか逃げずに生き残りたいものだ。
んで、なんとか戦いをやめてほしい。
甘い考えかもしれないけど。


何から話そうか色々考える。

天気の話。くだらない。
趣味の話。お見合いか。



「単刀直入で行くしかねぇか」

そう決めた時、もう目の前には大天狗が座っていた。
どうやら到着したらしい。


初めて会う大天狗。
その体は大きく、見上げるほどだ。

威厳をもった顔つきでこちらを見下ろす。
見た目は温厚そうな好々爺なんだが、どうも底知れない何かを感じる。

強大な妖気、大きな敵意。

そして、



憎しみ。