「だが条件がある!」

狂喜乱舞する鬼達を鎮めるために大きく冬矢は声を張り上げる。


「お前らの長であり、現在行方知れずの茨木童子、そいつの首を花宮秀明に捧げろ」

鬼狩りの交換条件。
それは今ここに住む鬼達の長の身柄を、秀明に差し出す事だった。

差し出したらその先は、鬼たちなら容易に想像できた。
どよめきだす。さすがに自分たちの長の命を差し出す事にためらいがあったのだ。


「で、でも、そうなったら俺達はどうすればいいんですか?」

「茨木童子様がいなくなったら、俺達……」

鬼達は不安になって、顔を見合わせる。恐る恐る質問してみる。
待ってましたとばかりににやりと冬矢は笑う


「俺の百鬼夜行に入れ。行方知れずに逃げ出した茨木童子の代わりに俺が守ってやる」

「…………」

秀明は黙り込んだまま。
何も言わない。それは肯定の意思表示。鬼達は本当に、と顔を見合わせる。

少なくとも、秀明の恐怖からはこの長は守ってくれる。
茨木童子の命と引き換えに、自分たちの安全が手に入る。

茨木童子は行方知れず。理由は分からない。逃げ出したと噂も立っている。
そんな長よりは、この長について行ったほうが得策ではないだろうか。


「お、俺はついてく」

「俺もだ!」

「私たちも……!」

鬼達は次々に冬矢の百鬼夜行に加わると宣言してゆく。


「交渉は成立でいいな?」


この問いに、鬼達は雄たけびで答えた。
秀明の脅威を利用して、冬矢は酒吞島の百鬼夜行を手に入れた。