殺人未遂及び公務執行妨害で現行犯逮捕され、今、署地下の拘留所から東京拘置所へと身柄を移されて、裁判が始まるまでずっと拘束される。


 坂野も岩永も西谷も単なる警官で、弁護士資格などを持っているわけじゃないのだから、接見などは出来ない。


 聞くところによると、担当弁護士が週に二回程度、会いに行っているという。


 おそらく末田は刃物こそ手にしたものの、重罰に問われることはないだろう。


 何せ坂野を致死(ちし)させたわけじゃないのだし。 


 あくまで殺人未遂と公務執行妨害の容疑だけで済んでいる。


 だが法廷で争うとなれば、かなりの程度、弁護側も準備をしないといけない。


 少しでも被告人に対する情状が酌量(しゃくりょう)され、罪が軽くなるということを狙って、だ。
 

 今回の一連の事件に関して、黒幕だと思われる前島恒世を誰もが庇っている。


 何か恐ろしいものが潜んでいるのだ。


 警官ですら知らないアンダーグランドの世界で。