そこは我々の仕事じゃなくて、司法関係者の仕事です」


「松岡興業の岩沼専務をひき逃げした綾坂恵作は、今どこにいるんだろうね?」


「Nシステムで解析したところでは、視認できたナンバープレートには新宿と映っていたので、おそらく新宿区内にいるでしょう。そう遠くにまでは行ってないはずです」


「俺たちデカの仕事はそこだな」


「はい。警部補も今後の捜査に関して、上層部の指示を仰(あお)いでください」


「ああ。俺もこの道では長いからな。三十代のサカさんよりも警察社会では長く水を飲んできてるからね」


 坂野は頷くと、改めて前島恒世の過去を調べる必要性があることを感じた。


 恒世の子飼いで、彼が一番恩義を感じている古渡純平は今、都内の特養にいて、もう七十代なので余生は長くない。


 もちろん実業界からは完全に引退しているのだった。


 一方で捜査中の坂野を襲った末田友文という暴漢は、署の署員が取り押さえて身柄を確保している。


 新宿区内在住の三十歳男性で、村川グループのチンピラだ。