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 なぜ、前島恒世は庇われなければならないのか……?


 取り調べている松井もいまいち納得できなかったし、ガラス張りで可視化された取調室を外から覗いている警視正の栗川や、刑事課から出てきていた坂野、岩永、西谷などの捜査員たちもいぶかしんでいた。


 前島実業に対し、検察が行っていた内偵捜査はほとんど済み、前島恒世や買収先の会社関係者たちを立件するだけとなっていた状態の中、恒世が自社の資産公開へと舵を切ったのは実に意外だ。


 世間は今回の恒世の一連の行動を怪しいと踏んでいる。


 株価の値段は日本を始め、諸外国の景気動向と共に上がったり下がったりを繰り返す。


 ふっと坂野は思った。


 暴落(ぼうらく)している株をネットでの情報等を使い、一定期間安値で買い占めていた人間が、高値となった時点で売り抜けて差益を稼ぐ手法――、いわゆるインサイダー取引というものがあるということを。


 こういった場合、日本橋兜町にある東証内にこの手の犯罪を謀議している人間が風説を流す。


 もちろん一つの社の発行済み株式の三分の一以上を買い付けてしまえば、TOBが成立