そして二月も半ばが終わり、下旬に差し掛かる頃、恒世が社長を務める前島実業でも目立った変化があった。


 それは特捜の人間たちが仲間内で村川グループのオフィスや組関係者たちを張っていて内偵捜査もほとんど済んでしまい、立件だけとなっていた状態で、恒世が前島実業の資産公開に踏み切ったことだ。


 由自党と絶えず癒着して裏金を渡しているというダークなイメージをクリーンなそれに変えるため、恒世はあえて自社の資産を公開し、自分たちは決して責めを追うことはないという風にしたいのだった。


 考えてみれば、異例とも言える一月の株主総会、時間外取引の手法を使っての他社の株の買収、その結果として当然疑われる他社の子会社化など、前島恒世という男は実に分かり辛い。


 意図が見えているのだが、坂野たち一般警官にしてみれば、恒世は常識を覆(くつがえ)すようなことをたくさんしてきているのだった。


 確かに経営者としての頭脳は冴える。


 だが、果たして人間的にはどうなのか……?


 心の中に闇や靄(もや)が感じられる。


 つまり不純というものだった。