14
 坂野たち警官は事態を見据えていた。


 だが、事は起こるべくして起こってしまう。


 前島実業の社長である恒世が、かねてからのライバル会社であり、絶えず敵対していた株式会社アイバドーラを始め大手商社数社の株式を、時間外取引の手法を使って完全取得し、子会社化した。


 前島実業本体が買収側の数社の株式の三分の一超を取得し、筆頭株主に躍り出たのはもちろん、財務の監査役(かんさやく)なども送り込む。


 折り入って金融庁が動き出した。


 前島実業の資産運用調査のためである。


 何せ時間外取引というのは手口が汚くて悪質なので、金融や財務の専門家たちが調査に乗り出したのだ。


 坂野たち警察はもちろん、特捜の人間たちは前島実業のフロント企業の村川グループを捜査するために水面下で動き続けていた。


 世間は前島実業の不正な株式取得で賑わっている。


 マスコミも騒ぎ立てるのだ。