今現在民王党が政権を取っているが、一昨年二〇〇九年の総選挙で惨敗して政権から転げ落ちた由自党は虎視眈々(こしたんたん)と政権奪取を狙っている。


 与党時代からずっといい加減なことしかしてこなかったツケが、今民王党に回されている事実はひた隠しにしていて。


 考えてみれば、新宿など首都圏の街頭で演説している由自党の谷田総裁はまるで訳の分からないことばかり喋り続けている。


 単に政権を奪い返すことばかり考えていて、党利党略(とうりとうりゃく)は見え見えなのだった。


 海外でマネーロンダリングされた資金が村川グループを通じていったん前島実業へと入り、それから先、由自党の資金管理団体に入ってくる仕組みを警察や検察の関係者は知っている。


 そのカラクリが解けて、取引の全容が明らかになりさえすれば、なぜ前島恒世が株取引を始めとして、手の込んだ方法を使い不正に資金を得たかが分かるのだし、永嶋や岩沼が闇に葬り去られた理由も突き止められる。


 恒世の思惑は警察サイドには透けて見えるのだった。


 坂野と岩永、それに西谷が会議室を出て、刑事課フロアへと戻っていく。


「サカさん」