「今日からまた仕事が待ってるぞ」


 岩永がコーヒーを入れたプラスチック製のカップに口を付けていると、いきなりフロア内に人が数名入ってきた。


 先頭にいた、上下ともグレーのスーツに身を包み、髪を綺麗に整えた壮年男性が警察手帳を提示し、


「本庁の栗川だ。前島実業営業本部主任永嶋雄一朗氏殺害事件と、松岡興業株式会社岩沼孝一専務ひき逃げ事件に関して、本日付けで我々本庁捜査一課がここ新宿中央署に合同捜査本部を置く。いいな?」


 と言う。


「もしかして、本庁の栗川警視正ですか?」


 坂野がそう訊ねると、その男が、


「そうだ」


 と言って、すぐに部下の刑事たちに命じ、フロア内に新たにブースを設け始める。


 坂野も岩永も西谷も戸惑っていた。


 いきなり本庁のデカたちが大人数で所轄署へと乗り込んできたからだ。