「心配してたんですけど、よかったな。私はてっきり坂野巡査部長が長期で入院せざるを得ないのかなって思って、正直仕事が手に付きませんでしたよ」


「おう、そうだったんだ。西谷君、また君にも捜査に協力してもらうよ」


「分かってますって」


 西谷がそう言うと、坂野が自分のデスクに就き、持ってきていたノートパソコンを置いて立ち上げる。


 OSが古くて、起動までに若干時間が掛かるのだが、坂野は使い慣れたマシーンの方がよかった。


 係長席にいた警部補の岩永が、


「おう、サカさん。復帰したね」


 と言って、熱々のホットコーヒーを飲みながら、笑顔を見せる。


「ええ。警部補、差し入れしていただいてた清張のサスペンス、全部読みましたよ」


「そう。確か、サカさん、清張の大ファンだったって聞いてたからな」


「はい。あの作家の描く刑事に憧れて、入庁してきましたから」