それまで捜査本部長を務めていた平岡警視は副本部長に降格となり、捜査会議が一変する。


 本庁側としては所轄の縄張り意識の強さが邪魔なのだろう。


 だが、新宿中央署は本庁の管轄署でも一番大きな面積を占める。


 おまけに犯罪の街、新宿でもど真ん中に大規模な建物を構えていたので、全部本庁の言いなりというわけにはいかない。


 前島実業内での人間関係は随時調べが進んでいる。


 坂野も岩永も西谷も、新しく捜査本部長になった西河が、警察内での個々の事情や力関係を知らないのを見抜いていた。


 坂野もノンキャリで入庁してきた一巡査部長の身なので、下手にモノが言えない。


 前島恒世が前島実業の本社ビルで開く株主総会は今月の下旬になりそうだ。


 おそらく恒世も株の所有主である参加者たちに、たくさんの配当金を配るものと思われた。


 社が儲かっているので、社益を株主たちに還元するためだ。


 坂野はずっと考え続けていた。