金品じゃないところを見るに、おそらくメモリーカードなど、データの類だろうと思われた。


 採取されたタイヤ痕を鑑識が数日掛けて鑑定した結果、車種は一般の極普通のトラックで、新宿ナンバーだったことから、新宿区内で乗り回されたものと特定された。


 新宿中央署内では連日、捜査会議が開かれ、古河村と内多、それに石松の犯罪者三人を任意で引っ張るべきだと言う意見が多数上がる。


 坂野も同じように主張していた。


「ここでホシを取り逃がしちゃまずいですよ」と。


 ただ、刑事課内には慎重な意見もある。


 下手に捕まえても、取調べの段階で証拠不十分なら起訴まで出来ず、無罪放免となるからだ。


 その折、署内にある本庁との合同捜査本部に、西河という本庁のデカがやってきた。


 本庁も今回の永嶋殺しと、岩沼ひき逃げ事件に対し、所轄だけの捜査にブレーキを掛けて慎重に捜査を進めるため、あえて新たに一人捜査員を投入したものと思われる。


 西河はキャリアで、れっきとした幹部候補なので、いきなり捜査本部長に納まった。