一気に事件は解決するだろうと思われた。


 残りは前島恒世だけである。


 今回の事件に関して、殺人にまでは手を染めていないにしても、古河村や内多と共謀共同正犯が成立するあの男が捕まることで、事件は一気に解決だ。


 警察関係者は近いうちに前島を引っ張るつもりでいた。


 任同した後、容疑が固まれば逮捕状を請求し、入念に取り調べる。


 必ず取調室でウタわせるつもりでいた。


 それこそ無理に自白を強要したりなどは出来ないが……。


     *
 数日が経ち、温かさが増した。


 前島実業内に地検の係官と一部の警官が混じって、再捜査が入る。


 主任検事の河相(かわい)が家宅捜索令状を翳(かざ)し、


「東京地検です。今から前島恒世社長の社長室及び秘書課などの他の部署の捜索を再度行います」