楽園の炎

「僕は、朱夏を・・・・・・朱夏を、妃に迎えるつもりでいたのに」

震える朱夏を宥めるように、葵は少し口調を和らげて言った。
だが朱夏を押さえる力は、緩めない。

「葵・・・・・・」

かろうじて押し出した声は、自分の声とは思えないほど、か細く震えている。
言いようのない恐怖に、朱夏は竦んでしまう身体を必死で動かし、降りてくる葵の口付けを拒んだ。

「やだ! 何で・・・・・・。ナスル姫のこと、嫌いじゃないんでしょ!」

「嫌いじゃないよ。でも、僕が好きなのは、朱夏なんだよ。僕は、朱夏が僕のことを男として見てくれるのを、ずっと待ってた。いずれは、きっと僕の気持ちに応えてくれるって、ずっと思ってたんだ!」

葵がそこまで自分を想っていたことに、嬉しく思う反面、この状況の切り抜けが、それだけ難しいということに、朱夏は愕然とする。

首筋に口付けされ、朱夏は泣きそうになるのを、必死で堪えた。

「やめてよ! 人を呼ぶわよ!」

気丈に葵を睨み付ける朱夏に、葵は鼻を鳴らした。

「無駄だよ。朱夏、忘れてない? 僕は王子だ。人払いぐらい、してある」

言葉を失った朱夏の帯に手をかけ、葵は唇を寄せて、少し優しく言った。

「ナスル姫との結婚は、断れない。だけど、朱夏も欲しい。欲張りだっていうのは、わかってるよ。でも、ずっと好きだった朱夏を、そう簡単に、諦められるわけないよ・・・・・・」