楽園の炎

真っ直ぐに父の目を見て言う朱夏に、炎駒は安心したような、虚を突かれたような、複雑な顔をした。
憂杏の言ったとおり、父上も、自然と葵と一緒になるだろうと思ってたんだなぁ、と、朱夏は一人、自分だけが取り残されていたことに、笑い出しそうになる。

「父上。わたくしは今日、ナスル姫様に、お茶に誘われました。いろいろなお話をしたのですけど、とても可愛らしい姫君でしたよ。葵王の相手としても、何ら不都合はないかと。葵王は、何と?」

「まだ何とも。葵王様には、お見合いだということも、先程伝えられたばかりだ。・・・・・・驚いておられた」

アルは、姫君が来られるのは、そういうもんだと言っていたけど、葵もやはり、自分と同じで、そういう意識はなかったのかと、朱夏は少し呆れた。

「でもナスル姫は、葵のこと、本当に想ってますよ。あたしにも伝わるぐらい」

少し砕けた口調で、朱夏は言った。
炎駒は、軽く頷く。
そして、朱夏の頭を優しく撫でた。

「お前にも、誰か良さげな者を、探そうか」

父の肩に頭を預けて、朱夏はふるふると首を振った。

「あたしはまだ、よくわかりません。憂杏に言われたように、今まであたしの視界に入っていたのは、葵だけですから。少し、他の者に目を向けてみたいと思います。他の娘たちからしたら、随分遅いのでしょうけど」

「構わんよ」

穏やかに言う父に、朱夏は顔を上げた。