楽園の炎

「母上にも、朱夏を紹介したことだし。これで皇族皆に、朱夏を披露できたことになるかな。あ、姉上がまだだな」

「お姉さん? そういえば、皇太子様にはお姉様がいらっしゃるんだっけ」

「ああ。ちょっと遠くに嫁いでおられるから、滅多にお会いできないんだが。昔は俺もナスルもお世話になったし、機会があれば訪ねていこう。一応今回の婚儀に関しては、書簡で知らせてはあるがね」

部屋を出ながら、朱夏は振り返った。

「ねぇユウ。アリンダ皇子は、皇家を追われたわよね。その母君は、どうなるの? そっちのお墓は、アリンダ皇子の母君のお墓でしょ?」

ろくに手入れもされていない墓をちらりと見て言う朱夏に、夕星は立ち止まった。
冷たい一瞥を、メイズ妃の墓に投げる。

「墓を暴くようなことはしないさ。皇子単独の犯行なら、その母親までもが罰せられることはない。けど今回は、メイズ殿にも責任の一端はあるんだ。元々、罪を犯したかただからな。当時の罪は、直後に殺されたことで不問とされたが・・・・・・。そもそもの発端は、メイズ殿といっても過言ではない。墓のククルカン像は、削られるだろう」

「ククルカンの加護が、なくなるのね」

アリンダがメイズ妃を斬ったことが、メイズ妃の夕星を襲ったことの罰だというなら、そのときに皇家の墓には入れないようにもできたのではないか。
アリンダに斬られなくても、皇帝陛下の側室でありながら、他の皇子と通じるなど、死罪に相当する。

しかも、年端もいかない皇子に薬を盛り、無理矢理手籠めにしようとしたのだ。
極刑は免れなかっただろう。
罪人であることは、変わりない。

それでも側室として皇家の墓に葬られたのは、皇帝陛下に自責の念があったのだろう。