「それは楽しみだが・・・・・・。微妙だな・・・・・・」

皇帝陛下も複雑な顔になる。
ことのほか可愛がってきた娘である。
男親としては、何とも言えない感情だ。
炎駒も思わず、朱夏に苦笑いを見せた。

「・・・・・・朱夏も、コアトルに来る頃には、子を連れているかもしれぬな」

「孫をお見せできるよう、頑張りますよ」

赤くなる朱夏とは違い、夕星はしれっと言う。
近衛隊が、後ろからやんやとはやし立てた。

「あらっ、じゃあわたくしの子供と朱夏の子供、同じ歳になるかもしれないわね。ふふっ楽しみだわ」

ナスル姫も何ら照れることなく、笑って朱夏に手を差し伸べる。
こういうところは兄妹だなぁと思いながら、朱夏は曖昧に笑って、ナスル姫の手を握りかえした。

「お兄様、お元気で。今まで守ってくれてありがとう。これからは、朱夏を守ってあげてね」

微笑むナスル姫を抱き寄せ、夕星は、とんとんと背中を叩いた。

「ああ。お前も元気でな。何があっても、憂杏がいるから安心だ。幸せにな」

近衛隊の皆にも手を振り、ナスル姫は憂杏と一緒に離れていった。
二人は海沿いに、しばらくゆるゆると南下するらしい。

「じゃあ桂枝、元気でね」

ぎゅ、と桂枝に抱きつき、最後にまた炎駒に抱きつく。
アルファルド一行が船に乗り、船が岸を離れていく。

甲板に立つ炎駒が見えなくなるまで、朱夏は港で手を振り続けた。