楽園の炎

---あたしは、ずっと一緒にいすぎて、わかんなくなってるのかもな。単に、あたしの好みじゃないのかもしれないけど---

わかんないな、と結論付け、朱夏は姫と自分のカップに、お茶を注いだ。

「朱夏は? どなたか、いい人がいらっしゃるのかしら」

いきなり自分に矛先を向けられ、朱夏はお茶をこぼしそうになった。
その動揺を見逃さず、ナスル姫は、初めてにやりと、姫らしからぬ笑みを浮かべる。

「慌てたわね。どなた? 葵王様も、知ってらっしゃるの?」

「いえ、わたくしには・・・・・・わたくしは、とてもそんな甘やかなことは・・・・・・ていうか、本当にそんな人は、おりません」

初めこそ狼狽えたが、考えてみれば本当に想いを寄せる者などいない。
ここのところ、やたらと葵のことが考えられるが、成り行きが気になっているだけで、想いを寄せているわけではない。
少なくとも、今は。

案外きっぱりと言い切った朱夏に、ナスル姫も、そうなの? と引き下がる。
が、思い出したように、菓子を摘みながら言った。

「そういえば、葵王様が仰ってらしたけど、朱夏、どなたかに宝物をいただいたんですって?」

そうだ、あの剣の鞘を、また憂杏に頼まないと、と思った朱夏は、いきなりトマトのように真っ赤になった。
ユウに、胸元を舐められたのを、思い出したのだ。