楽園の炎

とにかく良かったじゃないか、と明るく言い、葵は近くの屋台に駆け寄った。
簡単な手押し車の店先にかかっている小さな花束を物色する。

「う~ん、どれがいいかなぁ」

一通り商品を物色してから、ちらりと朱夏を見る。

「・・・・・・朱夏に聞いても、無駄だろうしねぇ」

「何よ、どういう意味?」

口を尖らせ、葵に近づく朱夏だが、色とりどりの花束を見ても、綺麗とは思うが、特に『これが欲しい!』と思うものはない。
どれが欲しいか聞かれたところで、別に欲しくないというのが正直な意見だ。

「大体葵、花束なんて買って、どうするのよ」

興味なさげに花束を見つめながら言う朱夏に、葵はぽりぽりと頭を掻いた。

「折角だからさ、ニオベ姫にお土産でも買っていってあげようと思って」

あ~なるほど、と納得し、朱夏は改めて花束を見る。

「なかなかお転婆なお姫様だけど、こういうのも好きそうよね。葵、すっかりニオベ様に懐かれちゃったね。あれ?」

言いながら、ふと朱夏は首を傾げる。
そういえばニオベ姫は、何か葵に対しては、やたら恥ずかしがっていたような。

「ねぇ葵。ニオベ様って、葵よりも憂杏に懐いてるよね? 葵とも遊んでるの?」

追いかけっこはしたがってたけど・・・・・・と、傍らの葵を見る。

「たまにね。もっぱら憂杏だけど。たま~に憂杏を引っ張って、僕も誘いにくるよ」

「そうなんだ。でもやっぱり、憂杏がいないと誘いにくいのね。遠慮してらっしゃるのかしらね」

「そうかもねぇ。何かやっぱり、憂杏には普通にじゃれるんだけど、僕には一歩引いてらっしゃるというか。ちょっと遠慮が見えるんだよね~。全然良いのに」

そう言って、葵は悩んだ末、淡い水色の花束を買った。