第二皇子・アリンダは、あれ以来城の北側にある朽ちかけた宮に軟禁されている。
あまり日も差さない部屋の中は薄暗く、この季節は寒さが一層身に染みる。

石造りの宮の回廊を歩き、奥の扉の前で、皇太子は小さく身震いした。
先頭を歩いていたアシェンが、いかにも頑丈そうな鍵を取り出し、部屋の扉の鍵穴に差し込む。
がちゃり、という重い音が、静まり返った宮内に響く。

アシェンが扉に手をかけて振り返り、同じように皇太子も、己のすぐ後ろの皇帝陛下を振り返った。
皇帝陛下が頷くと、アシェンは扉を静かに開く。

アシェンは十分注意していたが、きいぃ~っという不気味な音が、回廊に響き渡った。

室内は一応ちゃんと寝台もあり、生活に不自由はない程度の設備はある。
だが受ける印象は、やはり『牢獄』である。

アリンダは、ふてくされたように寝台に横たわっていた。

「・・・・・・アリンダ」

皇帝陛下が声をかける。
己の父親であっても、皇帝陛下という地位にある者が声をかけているというのに、アリンダは起き上がりもせずに、ちらりと目を動かしただけだった。