楽園の炎

「あ、あたし一人で、こ、ここに入れっての?」

一瞬セドナは怪訝な顔をする。
が、すぐに口を歪めた。
吹き出すのを、必死で堪えているようだ。

「初夜の寝所に、侍女がお供するわけには参りませんでしょ。中も真っ暗ではありませんから、怖くないですよ」

「朱夏様、何があっても、何を見ても、驚かないこと、ですよ」

よしよし、とセドナは頭を撫で、アルは念を押すように言い、にこりと笑ってさがっていってしまった。

しばらく茫然とその場に立ち尽くしていた朱夏だが、廊下は寒い。
不意にぶるっと寒気を感じ、朱夏は扉に手をかけた。
そろっと開いてみる。

廊下よりも一段と灯りを落とした部屋の真ん中に、天蓋付きの寝台が置かれている。
見たところ、夕星の姿はない。

朱夏はそろそろと部屋に入ると、ぱたん、と後ろ手で扉を閉めた。
きょろきょろと部屋の中を見回しながら、寝台に近づき、少し開いた天蓋の布をめくって、中を覗いた。

---良い匂い。香が焚きしめてあるのかしら---

シーツに顔を近づけて、くんくんと匂いを嗅いでいると、背後の扉が開いた。

「何やってんだ?」

夕星が、濡れた髪を掻き上げながら入ってきた。