楽園の炎

夜が更け、湯から上がった朱夏を、セドナが用意していた夜着で包む。
上から外套をかけ、湯殿から出ると、近衛隊がその場に膝を付いていた。

「朱夏姫様。この度は、誠におめでとうございます。今宵からはお部屋が変わります故、我らがお送り致します」

「あ、ありがとう。奥宮だっけ」

セドナに促され、近衛隊と一緒に、新たな部屋へと向かう。

「ああ、折角お部屋までの道を覚えたのに、また覚え直さなきゃいけないのね」

きょろきょろと辺りを見ながら言う朱夏に、セドナが微笑んだ。

「そうですわね。奥宮は、夕星様が今まで使ってらした辺りです。正確には、そのさらに奥ですが」

「そうなの? てことは、皇族のお部屋の奥ってこと?」

確か夕星の部屋は、南のどんずまりだとか言っていた。

「皇族のお部屋とは、ちょっと違うのですがね。夕星様は、堅苦しいのをお嫌いになるから。どちらかというと、近衛隊の詰めている兵舎のほうですわ」

ふぅん、と相変わらずきょろきょろしながら、朱夏は歩く。
程なく、回廊を抜けたところに、小さな庭が見えた。

「わ、可愛い」

思わず朱夏は、小走りに庭に出た。
よく手入れの行き届いた庭には、いろいろな蕾を付けた植木や草木が植わっている。
小さなブランコまである庭のさらに奥に、ナスル姫たちの小宮よりは大きな建物があった。