楽園の炎

さらに、今になってようやく、自分が宗主国の皇子に挨拶なしでいたことに気づき、青くなる。
ひいぃぃっと小さく息を吸う桂枝を、朱夏が覗き込んだ。

「ど、どうしたの?」

「あわわわ・・・・・・。わ、わたくし、あまりの嬉しさに、夕星様を素通りしてしまいましたわ」

声を潜めて震える桂枝に、ああ、そういえば、と朱夏はちらりと夕星を見た。
炎駒に促され、椅子にかけた夕星は、ちらりと朱夏を見る。
その視線に、朱夏の横にいた桂枝は、またも、ひいぃっと悲鳴を上げた。

「もも、申し訳ありません! わ、わたくしとしたことがっ夕星様へのご挨拶なしに、己の話を進めるなどっ」

朱夏が止める間もなく、桂枝はがばっとその場に平伏した。
今度は夕星が驚く。

「ど、どうしたのだ。桂枝殿」

立ち上がり、素早く桂枝の前に膝を付く。
だがパニック状態の桂枝は、顔を上げることもままならず、額を床に擦りつけたまま、ぶるぶると震えている。

夕星が、困ったように、傍らに立つ朱夏を見上げた。

「・・・・・・桂枝、ユウを無視して真っ先にあたしのところに飛んできたのを、謝ってるのよ」