楽園の炎

夕星に連れて行かれたのは、貴賓用の部屋だった。
夕星は朱夏を降ろし、扉を叩く。
程なく、中から桂枝が顔を覗かせた。

「まあっ! まぁまぁまぁ、朱夏様っ!」

夕星を認め、挨拶をしようとした桂枝は、後ろに立つ朱夏を見るや、涙を浮かべて駆け寄ってきた。

「お綺麗ですわ。ああ、あの朱夏様が・・・・・・。何と言っていいものやら。嬉しすぎて、わたくし、もう・・・・・・もう・・・・・・」

ぼろぼろと涙をこぼす桂枝に、朱夏は困ってぽんぽんと肩を叩いた。

「もう桂枝。今からそんな泣いてて、どうするのよ。式はこれからよ? それに、憂杏だって結婚じゃない。あたしでそんな号泣してたら、憂杏のときなんて、耐えられないわよ」

「息子なんて、どうでもいいんですよぅ。朱夏様は、ずっとお育てしてきましたもの。ああ、あのお転婆な朱夏様が・・・・・・。こんなに、こんなに立派な淑女になられて・・・・・・」

感涙にむせび泣く桂枝を、朱夏は苦笑いしながら宥める。
顔を上げると、同じように苦笑いを浮かべる夕星の後ろに、炎駒が立っていた。

朱夏と目が合うと、炎駒は優しい笑みを浮かべ、夕星を部屋に招き入れた。

「炎駒殿。朱夏姫は必ず幸せに致します。今後は父親として、私もよろしくお導きくださいますよう」

炎駒が勧めた椅子の横に跪き、夕星が拳を左胸に当てて、頭を下げる。

夕星が炎駒を自分より上に扱うのはいつものことなのだが、何でもないときまで完全に臣下として振る舞う姿を、桂枝は初めて見たのだろう、驚いた顔をして、夕星と炎駒を見比べている。