楽園の炎

式の進行をいろいろ教わっている間は、とても頭に入らなくてパニック状態だった朱夏も、当日になると、やけに気分が落ち着いた。

式典用のドレスを身につけ、鏡の前に座った朱夏に、アルが髪を梳きながらため息をつく。

「はあぁ、お綺麗ですわぁ。やはり、いざお式に臨むとなると、朱夏様も生来の良さが全開になりますのね」

しみじみ、というように言い、髪を結い上げる。

「ああ、毎晩のように、朱夏様を磨き上げてきた甲斐があったというもの。幸いあのときの傷も、ほとんど治りましたし」

酷かった手首の傷も、苺鈴にもらった薬を付けているうちに治ってきた。
大分薄くなったので、もうわからないだろう。

「アル、朱夏姫様の私物は、これだけなの?」

レダが衣装箱を抱え上げながら言う。
今日は朝から、朱夏の部屋は戦場のような慌ただしさだ。
式典当日の忙しさに加え、部屋の引っ越しのため、何人もの侍女が行ったり来たりしているのだ。
式が終われば、朱夏はそのまま、奥宮に移るらしい。

「ごめんねぇ、レダ。重いでしょ?」

鏡越しに朱夏が言うと、レダは衣装箱を、ひょいと肩に担ぎ上げてみせる。

「全然。朱夏姫様、もうちょっと贅沢なさいませ。元々の朱夏姫様のお荷物など、ないも同然ではないですか」