楽園の炎

「桂枝!」

朱夏は桂枝に走り寄った。

「まぁ朱夏様。お久しぶりにございます。お元気そうで」

「寒いでしょ? そうだ、桂枝こそ、輿に乗らないと! 父上と一緒に、あの輿に乗る?」

輿は二人乗りなので、桂枝を乗せたら朱夏が乗れないが、別に朱夏は来るときと同様、夕星に乗せてもらえばいい。
ちょっと恥ずかしいが、桂枝を馬に乗せるのは絶対無理だ。

が、桂枝はぶんぶんと首を振る。

「と、とんでもない。わたくしは侍女ですもの。他の者と一緒に、歩きますよ」

「無理よぅ。桂枝こそ、父上より歳なんだから」

これ、と炎駒が軽く朱夏を小突く。
頑なに輿を拒否する桂枝に、夕星が笑いかけた。

「遠慮なさいますな。あなたもナスルの母親になるおかただ。俺にとっても、母親のようなものです。道を急ぎますので、他の侍女も、それぞれ兵士に乗せさせますし、歩く者はおりませんよ。それとも、あなたが俺の前に乗りますか?」

最後の言葉に、桂枝は、ひいぃっと息を呑む。
今度は朱夏が、こら、と夕星を小突いた。

「さぁ、では皆、アルファルドの侍女殿を、一人ずつ馬に乗せろ。出立するぞ」

夕星が声をかけると、近衛隊の兵士らは、それぞれ荷物を割り振り、侍女を自分たちの馬に乗せていく。
ネイトが炎駒を促し、輿に乗せた。