楽園の炎

「でも、ナスル様だって最終的には憂杏を選んだじゃない。ナスル様だって、強さが一番大事なんじゃないの?」

「わたくしは特殊な状況にあったもの。国外に逃れても安心できないような状況じゃなかったら、あっさり葵王様とまとまってたんじゃないかしら。あら、でもどうかしらね。それでもやっぱり、憂杏と出会ったら、憂杏に惹かれたような気がするわ。葵王様はお優しいけど、わたくしみたいに甘えたな人間には、ちょっと物足りないかもね」

そういえば、ナスル姫は父親である皇帝陛下や、皇太子や夕星に可愛がられて育ったが、母親はいない。
姉君や皇后、セドナには可愛がられていたのだろうが、血のつながりから言っても、男寄りだ。
心の中には、どこか父親を求めるところがあるのだろう。

「そっか。そう考えれば、憂杏に惹かれるのも、わからんでもないわ」

頼りがい、という面を考えると、憂杏が一番だろう。
朱夏は納得して、ニオベ姫に視線を戻した。
両手でパンを持ったまま、ニオベ姫は、じっと朱夏とナスル姫の話に耳を傾けている。

「だとしたら、ニオベ様が葵に惹かれても、おかしくないですね」

にこ、と笑いかけると、一瞬ニオベ姫はきょとんとしたが、すぐにトマトのように真っ赤になった。

おや、と朱夏は、ちょっと目を見張る。
そのまま下を向いて、もしゃもしゃとパンを頬張るニオベ姫に、皆怪訝な目を向けた。

「・・・・・・女の子は、早熟ですな」

ややあって、ネイトがぽつりと呟いた。