「大祭って、どんなお祭りなの?」

ぺたりと夕星にくっついたまま、朱夏は目だけを上げて言った。

「主神・ククルカンを称える祭りだよ。ま、神事は神殿がやるし、民は純粋に祭りを楽しむだけだけどな。神事の後は、神殿からいろいろなお下がりが振る舞われるし、至る所に屋台は出るし、音楽が流れて、皆が浮かれるのさ。神事の始めには、父上が開始の合図に祈りを捧げるし、民の代表だから、滅多に姿を拝めない皇帝陛下が、民の前に姿を見せるってんで、神殿前は物凄い人だ」

「華やかなんだねぇ。楽しそう」

「今年はさらに、俺らの婚儀もあるしな。ああ、そういえば」

夕星が、ぽん、と己の膝を叩いた。

「父上が、ナスルの式も、そのときにすると仰ってた」

え、と朱夏は勢い良く顔を上げ、危うく夕星の顎に頭をぶつけそうになる。
慌てて夕星がのけ反った。

「許されたってことだな。まぁ、許さないことはないだろう、とは思ってたがね」

ぎゅ、と朱夏を抱きしめ、夕星は朱夏が何か言う前に、答えを言った。

「そっかぁ・・・・・・、良かった。お式は、皇女としてのものになるのかしら? 皆の前で、降嫁するの?」

「ん~・・・・・・。メインは俺らになるだろうね。ナスルは、そうだな・・・・・・。大々的にはしないかもね。神殿内で、ひっそりとするかも」

「あんまり憂杏、人前に出たくないだろうしね。皆の前で憂杏を紹介したら・・・・・・国民全員、卒倒するかもだしね」