楽園の炎

「そろそろ雨の季節も終わるよ。町では大祭に向けての準備が始まってる」

とっぷりと日は暮れ、闇に包まれた四阿(あずまや)で、夕星は朱夏を抱きながら言った。

この四阿は、朱夏の部屋から少し離れた庭にある。
四阿は本来、夏に涼を取るための小屋なので、どれも少し小高いところにある。
ちょっと下に見える部屋のテラスには、近衛隊が詰めているのが見える。

度々夕星は、朱夏を今のように、夜の散歩に連れ出した。
供は連れないが、こうしてすぐに近衛隊が飛び込める距離を保っている。
故に、近衛隊の面々もセドナも、二人だけの散歩を黙認しているのだ。

「そうなんだ。そういえば、雨もちょっと止むようになってきたね」

今は降ってるけど、と、朱夏は夕星に寄り添いながら、ちら、と暗い夜空を見上げた。
しとしとと、冷たい雨が降っている。

「寒くないか?」

夕星の言葉に、朱夏は顔を上げて、ふふっと笑った。
朱夏の身体は、夕星の身体にぴたりとくっつき、彼の外套に入り込んでいる。

「ま、寒いと言われても、これ以上は暖めてやれないけどな」

肩を抱く手に少し力を入れ、朱夏をさらに引き寄せながら、夕星が笑う。

ククルカンに入ってからは、あまり二人っきりでいられることがないため、たまのこういう時間には、夕星はここぞとばかりにべたべたする。
朱夏も、二人なら抵抗しない。