楽園の炎

「さっぱり、わからないわ」

「いきなり妃にすると言われても、朱夏はあっさり受けてくれるか? それほど葵王と、心が通じ合っていたわけでもあるまい。子供の約束でも、そういうこと言われたこと、あるか?」

まるで何もかも見透かしたようにすらすらと言うユウに、何となく悔しく思いながらも、朱夏は素直に首を振った。

葵とは、確かにずっと一緒に遊んできたが、そんな甘やかな事柄が出てくるような、いうなれば、ままごと遊びのようなことは、したことがないのだ。
いつも剣を打ち合い、森を駆け回り、泉で泳ぐ・・・・・・。

朱夏は頭を抱えた。
こうやって思い出してみただけでも、何と色気のない・・・・・・。

「ああ・・・・・・。何でこんな風に、育ってしまったんだろう。確かにあたしに結婚話を振ってみても、一笑に付すに決まってるわ。だから父上も、あたしにそういう話を、持ってこなかったのかしら」

「そうだなぁ。でも大抵の、地位のある親は、娘の意思なんざお構いなしに、嫁ぎ先を決めるがな。お父上も、朱夏のことを考えてくれていたんだろう」

そうかなぁ、と考える朱夏に、飛ばすぜ、と囁き、ユウは馬の腹を蹴った。
たちまち風のように、馬が走り出す。
物凄い速さで疾走する馬上では、うっかり話をしようものなら、舌を噛んでしまう。
朱夏は黙って、たてがみにしがみついた。