楽園の炎

「葵王様も、なかなか良い太刀筋でしたよ。しかし何ですな、太刀筋にも、お人柄が出るというか。葵王様の剣は、誠実そのものですな」

「ああ、確かに。夕星様の太刀筋のように、ふざけたところがない」

ふざけた太刀筋とは、一体どういったものなのか。
ちょっと朱夏は首を傾げた。
ネイトが、ははは、と笑いながら、傍の兵士と軽く剣を合わす。

「ふざけた、というか、読めないのですよ。こちらが考えもしない剣を、ひょいと繰り出す。普通は、こう来たら・・・・・・こう返すものでしょう?」

説明しつつ、ネイトは実際に剣を合わせてみせる。

「それが、夕星様の場合は、たとえば・・・・・・こう来たり、いきなり飛び退いて、そうかと思えば一気に間合いを詰めてきたり。まさに予測不可能なのです」

「剣を使わず攻撃してくることもありますしね。剣を構えるから、剣で受けようとすると、いきなり蹴りが飛んできたりするのですよ」

「朱夏も結構、めちゃくちゃですよ。飛びかかってきたりしますし」

ネイトや兵士の言葉に、葵が応える。
あはは、と和んでいると、セドナが近づいてきた。

「さぁさぁ姫様。そろそろお夕餉ですわよ。湯浴みなさって、汗を流してくださいな」

「あ、わかりました。お腹空いたぁ。葵も一緒に行く?」

素直に立ち上がり、朱夏は皆に手を振って、葵を伴いセドナと訓練場を後にした。

「・・・・・・全く、つくづくお可愛らしい姫君だ」

くすくす笑いながら言うネイトに、皆頷きあいながら、朱夏を見送った。