楽園の炎

「とあああぁぁぁ~~っ」

「うわぁっ! ひ、姫君っ!」

顔を引き攣らせる兵士に、朱夏は遠慮無く体当たりした。
己の仕える主の婚約者である姫君に、不用意に触れるのを躊躇った兵士は、まんまと朱夏に吹っ飛ばされる。

「一本! それまで」

ネイトが片手を挙げ、朱夏がガッツポーズをする。

「全く姫君は、お元気ですなぁ。もう夕暮れですのに、スタミナ切れということがないようですね」

「我々のほうが、先にばててしまいそうですな」

笑い合いながら、皆が周りに集まってくる。
差し出された水を飲みながら、朱夏は、ふぅ、と息をついた。

「ああ、やっぱり思いっきり身体を動かすと、気持ちいいわぁ。皆強いから、やり甲斐もあるし」

訓練場の端にある長椅子に座り、楽しそうに言う朱夏の横に、葵が座る。
葵も一緒に、訓練に参加していたのだ。
もっとも葵は、朱夏とは違い、へとへと、といった感じだが。

「うう・・・・・・。やっぱり大帝国の近衛隊ともなれば、剣戟の重さ一つとっても全然違う。朱夏、よく初めから終わりまで、ぶっ通しでできるよ」

「情けないわねぇ。大体葵、いちいち剣をまともに受けるからよ。受け流していかなきゃ、そりゃばてるわよね」

言いながら、朱夏はぐにぐにと葵の二の腕を揉む。
そのたびに葵は、うう、と情けない声を上げた。