楽園の炎

夕星だけでなく、セドナまでがそのようなことを言っていたが、まさか本気だとは思っていなかった。

夕星は朱夏の頭を撫でながら、愉快そうに続けた。

「あいつ、歯もちょっと砕いたようだな。顎が腫れ上がってたようだぜ」

「蹴り上げたりしたからかな。ユウに教えてもらった通り、鼻と顎を集中的に攻撃したから」

「教えておいて良かったよ。ほんとに、実践できて良かった」

葵のときのように、身体が竦んでしまったら、どうなっていたことやら。
朱夏は夕星にもたれかかった。

「葵はただ怖かったし、アリンダ皇子はひたすら気持ち悪かった。何でおんなじ男の人なのに、ユウは違うんだろう」

「そりゃ、俺が朱夏を特別に想うように、朱夏の中でも俺は特別なんだろうさ。俺まで気持ち悪がられたら、ショックだなぁ」

冗談ぽく言う夕星を見上げ、朱夏も、あはは、と笑った。

「ユウは、全然そんなことないよ。身体は固まっちゃうけど、どきどきして緊張するからだもの」

ふぅん? と夕星は、少し身体を離して、じっと朱夏を見つめた。
改めて見つめられると、それだけで朱夏の心臓は跳ね上がる。

夕星はゆっくりと手を、朱夏の頬に当てた。
親指で、口の端を軽く撫でる。