楽園の炎

日が傾いてから、朱夏は湯殿の長椅子に寝そべって、うとうとしていた。
アルが、身体に香油を擦りつけている。

「大分薄くなったところもありますけど、本当にこの痣を見るたびに、怒りが湧きますわぁ」

ぶつぶつと言うアルに、朱夏は腕を前に伸ばして、まじまじと見た。
今はうつ伏せに寝転んでいるため、見えるのは腕だけなのだ。

「ん~、手首はまだ全然治ってないなぁ。腕には他に、傷はないんだけど」

「二の腕に、掴まれた跡のような痣がありますわよ」

言われてちら、と首を回せば、右の二の腕の一部が赤くなっている。
他の痣よりかなり薄いが、よく見れば手形になっているのがわかる。

ふぅ、と朱夏は、顎の下で手を組んでため息をついた。

「ああ、でも楽しかった。やっぱり身体を動かしてると、気分が良いわ」

「近衛隊の兵士との手合わせは、良い気分転換だったようですわね」

「皆、凄く強いもの。攻撃が読めないなんて、今までそうなかったのに」

楽しそうに言う朱夏に、アルは笑みを浮かべた。
やはり朱夏は、部屋に閉じこもっているより、兵士に紛れて剣を振るっているほうが、生き生きしている。