楽園の炎

ぎゅっと布を縛ってもらうと、ひんやりとした感触が両手首に広がった。
そこで初めて、朱夏はぐるりと部屋を見回す。

「あれ、そういえば、ナスル様は? 憂杏もいないの?」

ナスル姫は、一緒に寝ていたはずだ。

「ナスル姫様は憂杏さんと一緒に、朝から皇帝陛下のところへ行っておりますよ」

「え、憂杏も?」

また呼ばれたのだろうか。
結局あの二人は、どうなるのだろう。
何だか自分の周りも慌ただしく、ともすれば憂杏のことなど忘れがちだ。

結婚前って、もっとゆっくりと幸せを噛みしめるもんじゃないかしら、と思いながら、朱夏は寝室を出た。

居間には、レダを始め、数人の見知った侍女が控えている。
扉の近くには、内側にも近衛隊の制服を着た兵士が立っていた。

「レダ、怪我はどう?」

朱夏が駆け寄ると、レダは笑って手を振った。

「大丈夫ですよ。わたくしは朱夏姫様よりも、脂肪が多くついておりますから。少々のことでは、びくともしません」

そして、まぁ、と呟いて朱夏の頬を軽く撫でた。

「朱夏姫様こそ、頬がまだ腫れているではありませんか。お口の横の傷も、跡になっておりますし」

え、とアルとセドナが朱夏を覗き込む。
そして、二人とも眦をつり上げた。