楽園の炎

「よいしょっと」

最後の外壁の上から飛び降りて、ユウは被っていた布を外した。
そのまま布を肩からかけ、歩き出す。

「どこに行くの?」

問いかける朱夏に、ユウが手を差し出す。
月明かりはあるが、その他に灯りはない。
朱夏は素直に、ユウの手を取った。

「星見の丘。綺麗なんだろ。見てみたい」

歩きながらユウは、楽しそうに言う。

「え、あんなところまで? そりゃ、歩いては、ちょっと無理だよ」

少し慌てて、朱夏はユウの背中に答えた。
朱夏の馬を呼ぼうにも、この夜中に口笛を吹くわけにもいかない。

「うん。それで、どうしようかと思って。朱夏の馬は、決まったところにいるわけじゃないの?」

とことこ歩きながら、ユウがまたのんきに言う。
何も考えていないのかと不安になった朱夏の目が、前方の木に括り付けられた、一頭の馬を捕らえた。
ユウはその馬に近づくと、括っている紐を解きにかかる。

「これは、あなたの馬?」

「うん。普段は市にいるからね。ここまで来るのも、歩きじゃちょっと難儀だろ。こいつに乗ってきた」

ぽんと背中を叩かれた馬は、その辺によくいるのと変わらない、普通の運搬用の馬だ。
ここにいる間、何日か借りているのだろう。
自分の馬を持たない異国の者などは、必要な日数分、役所に金を払えば、馬を借り受けられる。