一瞬だが、胸元の素肌に触れたユウの指先の感触に、朱夏は息を詰めて固まっていた。
稽古中なら、即座に腕を捻り上げているのに、今は身体が痺れたように動けない。

「これ、俺があげた剣だよね。へぇ、首飾りにしたんだ」

固まる朱夏に気づかず、ユウは朱夏の胸元で、首飾りになった短剣を、まじまじと見た。

「気に入ってくれたんだ?」

ひょいと視線を上げて朱夏を見つめたユウに、何故か朱夏の胸は跳ね上がった。
相変わらず固まっている朱夏に、ユウはようやく違和感を覚えたようだ。
が、その理由がわかるはずもなく、ん? と朱夏に顔を近づける。

「~~っ!」

音がするほどに激しく息を呑み、朱夏は大きくのけ反った。
元々灯りをつけていなかったからわからないだろうが、もし灯りがついていたら、茹で蛸のようになった朱夏の顔を拝めたことだろう。

「あいたっ」

のけ反った拍子に、首飾りがユウの手から放れ、大きく揺れて朱夏の肌を傷つけた。

「鞘がないからな。そのままつけるのは、ちょっと危ないかも」

言いながらユウは、いきなり朱夏の腰に手を回すと、ごく自然に、朱夏の傷口に口を付けた。
ぺろ、と舐め、すぐに口は離れたが、その一瞬で朱夏は、雷に打たれたような衝撃を受けていた。

何せ、傷の場所は、朱夏の胸元なのだ。